J-Law°

司法試験・予備試験受験生やロー受験生のモチベーション維持のために、定期的に問題の検討をしていきます。

検討課題6:検討編③~制度Bの検討~

Ⅲ 本問の検討2-制度B

 制度Bは、保護者に投票権を与えるという制度です。選挙制度の合憲性を論じていくのは変わりないので、制度Aと判断枠組みの大きな流れは変わりありません。もっとも、制度Bの一番の問題点は、一人一票の原則に正面から違反しているように見えることです。このような基本原則を守ることは立法府の責務ですから、これに反する場合、立法裁量の逸脱ということになり、違憲ということになります。一人一票の原則とはなにか、その根拠を踏まえて、例外の余地が認められないのかなどを検討することになります。

 

1 一人一票の原則

 選挙制度の4原則の1つに、平等選挙があります。この平等選挙の内容の1つとして、一人一票の原則が含まれるとされています。

 受験生の知識はこれが限界だと思います。ここで頭をフル回転させることになるでしょう。正面から原則に反するものについて、合憲性を検討せよということは、合憲となり得る考え方もあり得る可能性があるということを論じることになります。原則に対する例外の余地を考えるのです。そうすると、一人一票の原則の趣旨・根拠がなにかを考える必要があります。

 なぜ、一人一票の原則が必要なのか。それは、歴史的に身分や経済力の高い者が特権を得ることで、政治指導をしていたことだと考えられます。選挙は、本来その社会の構成員に与えられた権利(抵抗権ともいえるでしょう。)であり、それを特権として一部の者が有利にしてしまうことは、正常な社会における選挙制度とはいえないのです。

 

2 例外として許される余地はあるのか?

 ここまで考えて検討をしていきましょう。法律における例外を考えるときは、必要性と許容性という観点から考えるのが基本です。こういうときに、基本的な思考が役に立ちます。

 保護者に複数の投票を認める制度を設けたのは、未来世代、特に選挙権を有しない子どもの意見を反映させるためでした。この必要性が妥当なものかを考えていくことになります。そもそも、子どもに選挙権がないのですから、その代理のような形で選挙権を与えることは許されるのでしょうか。確かに、憲法15条3項では「成年者」による選挙を保障しているだけで、それ以外の選挙権を認めていないように読めます。しかし、それは子どもの判断能力がないことから、選挙の公正を歪めやすいからであるとも考えられます。そうだとすれば、判断能力のある者が代理することで不利益は回避でき、むしろ子どもの意見を反映できるように思えます。

 ただし、「保護者」の投票=子どもの意見と必ずしもなるとは限りません。子どもの世代のことを考えずに、自らの考えで投票する人もいると思います。その場合、子どもの選挙権の濫用ということで無効となるのでしょうか。難しい問題を孕んでいるように思います。また、そもそも「保護者」って誰ですかという疑問も生じます。仮に養親も含むとすれば、養子をとればとるほど投票数は増えるのでしょうか。親と子が別々に暮らしている場合、その親は子どもの代弁者として「保護者」にあたるのでしょうか。結局、子どもの意見を反映させるという趣旨に合致する制度かと言われればそうともいえないように思います。

 仮に必要性が妥当なものだとして、許容できるものでしょうか。制度Bは、身分や経済力とは無関係であることから、一人一票の原則の趣旨に反するものではなく許容されるとの考えはあるでしょう。しかし、それでも1票しか持たない選挙人と複数表を有する選挙人との間に区別が生じています。このような区別は平等選挙という基本原則の下ではだとうなのでしょうか。かなり露骨な不平等だと思います。

 

3 解消・緩和の妙手はあるのか?

 このように、制度Bは平等選挙(一人一票の原則)に反するものであり、憲法44条に反し違憲であると考えるのがよいと思います。あくまでも法律に関する問題への解答としての論文ですから、原則―例外という基本的な思考に沿った論述ができるとよいと思います。

 さて、この違憲性を解消する方法はあるのでしょうか。制度Bを取り入れたいのであれば、比例区のみでの実施をすればよいというのが出題趣旨に書かれています。個人的には、これで不平等が解消されるかは疑問です(緩和はされるだろうけど、いいのかな…。)。

 

Ⅳ 最後に…

 出題趣旨に沿ってできる限り書いてみましたが、これでいいのか疑問です。ゼミなどで検討して、より練ってみてください。この問題を通して学ぶべきところは、選挙権と選挙制度について、判例はどのような形で違憲性の審査をするのかという点です。知識の整理の部分をまず理解し、使えるようになることを目標にやってみてください。

 Fin

 

※次回からは、慶應ロー2019年度を検討してきます!書けるように思えるけど、ほんとうに書けていますかね?そんなセルフチェックに使える問題です。 【2017年度ではなく、2019年度です。すみません…】