検討課題10:問題編~オリジナル問題~
お待たせしました!
昨年の司法試験の形で、財産権の問題いきましょう!
始めにいっておきます。これ、むずいです。
書いてほしいことはすぐわかるけど、
その個別具体的検討において、めちゃくちゃ考えなきゃいけない。
そういう意味でむずい問題です。
委託されて作った問題の一部分をアレンジしたものなんですが、そのフルバージョンの問題を解いた方々は悲鳴をあげたと聞いております。
規範を覚えていることを前提に、個別具体的検討を充実させることが目標に、一緒に検討してきましょう。
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〔問 題〕
20**年,A県では,コンサートやスポーツ観戦等のチケット転売に対し,「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」(以下「本法」)による規制があってもなお高額な転売取引がなされていることを知った。
本法第2条第4項では「業として行う有償譲渡」を規制対象としており,「業として」とは一般的に,反復継続の意思をもって公衆に対して,営利的活動として譲渡することを意味する。そのため,SNSなどの「友達」への譲渡は「公衆に対して…譲渡すること」とは言えず,「業として」の要件を満たさない。そのため,高額な転売取引の余地を与えてしまっていた。
このような状況を鑑み,A県では,A県内の施設で開催されるイベントのチケットに関して,転売の一切を禁止するという強直な規制を有する新しい条例(以下「本条例」という。)の制定を検討している。
【条例制定措置について】
本条例の目的は,転売の一切を禁止することで,チケットに関する適正な流通を確保することを目的とするものである(本条例第1条)。チケットについては,本法第2条第3項の「特定興行入場券」のうち,A県で行われる興行に限られる(本条例第2条第1号)。
本法では「興行主の事前の同意を得ない特定興行入場券の業として行う有償譲渡」を「不正転売」としている(本法第2条第4項)が,本条例第2条第2号は「興行主の事前の同意を得ない特定興行入場券の有償譲渡」とされている。規制の対象は同様であるが,より強力な規制となっている。
確かに,購入者は興行入場券について所有権を取得するが,本法第2条第3項第1号によれば,転売規制の対象となるのは,「当該興行入場券の売買契約の締結に際し,興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨を明示」するなどされたものであり,契約上転売することのできないものである。
やむを得ない理由からイベントに行けなくなったときなど,チケットを無駄にしてしまうおそれがあるとの意見があったことから,興行主への買取請求制度を設けることを義務付けている(本条例第3条第2項)。この制度により損失を回収することはでき、この点について問題はない。
〔設 問〕
あなたは,A県から依頼を受けて,法律家として,この条例制定措置が合憲か違憲かという点について,意見を述べることになった。
その際,A県からは,参考とすべき判例があれば,それを踏まえて論じるように,そして,判例の立場に問題があると考える場合には,そのことについても論じるように求められている。また,当然ながら,この立法措置のどの部分が,いかなる憲法上の権利との関係で問題になり得るのかを 明確にする必要があるし,自己の見解と異なる立場に対して反論する必要があると考える場合は,それについても論じる必要がある。
以上のことを前提として,あなた自身の意見を述べなさい。なお、本法は合憲であることとする。
【別途資料】
〇A県特定興行入場券転売禁止条例 (案)
(目的)
第1条 この条例は,特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律を前提に,より適正な流通を確保することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。
⑴ 「興行」「興行入場券」「特定興行入場券」の定義については,本法第2条第1項ないし第3項の定義による。ただし,A県内において行われる興行に限る。
⑵ 特定興行入場券の転売 興行主の事前の同意を得ない特定興行入場券の有償譲渡をいう。
(特定興行入場券の転売の禁止と例外)
第3条 何人も,特定興行入場券の転売をしてはならない。
2 興行主等は,購入者が興行主等に対して特定興行入場券を購入価格で買い取ることを請求できる制度を設置しなければならない。
(特定興行入場券の転売を目的とする特定興行入場券の譲受けの禁止)
第4条 何人も,特定興行入場券の転売を目的として,特定興行入場券を譲り受けてはならない。
附 則
第1条 本条例は、公布の日から起算して6月を経過した日から施行する。
第2条 本条例は、施行前に販売された特定興行入場券については適用しない。
【参考資料】
〇特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律
(目的)
第1条 この法律は,特定興行入場券の不正転売を禁止するとともに,その防止等に関する措置等を定めることにより,興行入場券の適正な流通を確保し,もって興行の振興を通じた文化及びスポーツの振興並びに国民の消費生活の安定に寄与するとともに,心豊かな国民生活の実現に資することを目的とする。
(定義)
第2条 この法律において「興行」とは,映画,演劇,演芸,音楽,舞踊その他の芸術及び芸能又はスポーツを不特定又は多数の者に見せ,又は聴かせること(日本国内において行われるものに限る。)をいう。
2 この法律において「興行入場券」とは,それを提示することにより興行を行う場所に入場することができる証票(これと同等の機能を有する番号,記号その他の符号を含む。)をいう。
3 この法律において「特定興行入場券」とは,興行入場券であって,不特定又は多数の者に販売され,かつ,次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 興行主等(興行主(興行の主催者をいう。以下この条及び第五条第二項において同じ。)又は興行主の同意を得て興行入場券の販売を業として行う者をいう。以下同じ。)が,当該興行入場券の売買契約の締結に際し,興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨を明示し,かつ,その旨を当該興行入場券の券面に表示し又は当該興行入場券に係る電気通信の受信をする者が使用する通信端末機器(入出力装置を含む。)の映像面に当該興行入場券に係る情報と併せて表示させたものであること。
二・三 (略)
4 この法律において「特定興行入場券の不正転売」とは,興行主の事前の同意を得ない特定興行入場券の業として行う有償譲渡であって,興行主等の当該特定興行入場券の販売価格を超える価格をその販売価格とするものをいう。
(特定興行入場券の不正転売の禁止)
第3条 何人も,特定興行入場券の不正転売をしてはならない。
(特定興行入場券の不正転売を目的とする特定興行入場券の譲受けの禁止)
第4条 何人も,特定興行入場券の不正転売を目的として,特定興行入場券を譲り受けてはならない。
※検討編①へ続く!