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司法試験・予備試験受験生やロー受験生のモチベーション維持のために、定期的に問題の検討をしていきます。

検討課題17:問題編~令和2年度司法試験〔公法系第1問〕~

お久しぶりです。

昨日、令和2年度司法試験の合格発表がありました。合格した皆様、おめでとうございます。もし『読み解く合格思考〔憲法〕』やこのブログが役に立っていたら、嬉しい限りです。

さて、来年司法試験に挑戦する人も、令和2年度司法試験を解き、分析することがあると思います。

私自身、司法試験直後に解説的なものを見るのが嫌いだったので、詳しい言及を避けていましたが、合格発表が終わりましたので、解禁ということにしました。

『合格思考』をどのように使うのか、どこを補った方がいいのかなどを、この問題の検討を通して、考えてもらえたらなと思います。

 

問題⇒AQ-5 (moj.go.jp)

 

次回から、検討編にいこうと思います!

 

以下では、【特別編】として、司法試験の問題を解くに当たって、よく聞かれることをまとめてみました。

 

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【特別編】

さて、司法試験の問題を解くに当たって、よく聞かれた質問に回答してみたいと思います。

Q1 司法試験の問題は何年分解きましたか。

A1 個人的には、5~7年分はフルで起案をしました。出題傾向が変わっても、聞きたいこと・求めている思考にそれほど大きな変化はありません。どの年度も実力を試す上では解いた方がいいでしょう。ただし、あまりにも古いものについては、時間的に手が回らないことがあります。もし時間があるのであれば、答案構成をして出題趣旨をチェックするくらいはしておくとよいと思います。無理して全年度やるよりも、直近5年を丁寧に分析し、基本問題の演習をした方がいいと思います。

 

Q2 司法試験の問題はどの順番で解きましたか。最新年度は後に回していましたか。

A2 司法試験の問題を解く目的によりますが、一番の目的は出題傾向の分析だと思います。どういうことがきかれているのか、どういう知識が求められているのか、どういう思考が求められているのかを分析することです。そうだとすれば、近い年度を押さえて、遡るのがよいと思います。ただし、昨年度の問題の出題趣旨や採点実感が出てない段階で解くのは、分析が不十分になってしまうかもしれません。出たらやる予定で計画を立てておくのがいいかなと思います。

 

Q3 時間を測って、フルで起案しましたか。

A3 私は、実践的な演習を目的にやったので、何人かで集まって時間を測ってフルで起案をしました。ただし、やった年度は5年分くらいですかね。答案を書かなくても、知識や思考の確認であれば、答案構成で足りると思います。時間のかかることなので、目的をどう設定するかがポイントです。

 

Q4 出題趣旨・採点実感をどのように使いましたか。

A4 出題趣旨は問題を読み解く上での道しるべ、採点実感は答案を書く上での道しるべとなります。各問題特有の記載ですが、一般論として抽象化できる部分がほとんどです。そこを分析し、ストックしていきましょう。

 出題趣旨はその問題作成者が考えてほしい点を明記したものです。出題趣旨を読み、考えてほしい点を押さえたうえで、問題文のどの部分から読み取れるのか、どのような誘導や問題提起をどこで示しているのか、知識として当然知っておくべき論点なのかなどを押さえます。もちろん、すべての考えてほしい点を答案で網羅することは不可能です。

 そこで、採点実感です。採点実感は、採点担当者のストレスの発散のために…ではなく、採点するにあたって、こういう印象を受けたという点が明記されています。そうすると、みんなが書けている場所とそうでない場所がわかってきます。みんなのかけている場所を落とした不合格です。そこを読み解き、どのようにすれば書けるのかを考えます。また、採点実感には絶対的禁止事項も書かれています。こういうことやるやつはダメっていう記載は、ストックしておきましょう。採点実感は答案を書く上での注意事項・道しるべになります。

 

Q5 問題の分析って、どうやればいいのですか。

A5 よく言われるけど、わからないという人が多いと思います。問題の分析といっても、傾向分析、問題作成者の意図の分析、思考の分析などがあると思います。

 傾向分析は、どういう問題が出ているのかを予測するというものです。最近話題の論点はこれだから出たのかな…なんて想像することです。こんな予測はあたらないので、直前期の緊張ほぐしに使ってください。

 普段やるべき分析は、出題趣旨や採点実感を使って、この段落やこの言葉はどのような意図があって書いているのかを分析していくことです。問題作成者には、考えてほしいことがあって、問題を作ります。その考えてほしいことを、どのような形で記載しているのかを分析してみてください。問題文を注意深くみるようになります。合格思考にも実践的に書かれているので、参照してください。

 思考の分析とは、どういった思考が求められているのか、具体的な問題を通して、一般化・抽象化する作業です。例えば、「薬事法違憲判決の判断枠組みを前提にして、本問の○○という事実や△△という特徴を考慮し、判断枠組みを定立することを求めたが、これができていなかった」という記載があったとすると、ここから①判例を前提にしないといけない、②○○という事実は規制目的に関する事実であることから、規制目的に関する事実を検討しなければならない……といったような作業をしていきます。これは非常に難しいのですが、採点実感でこれを行うことが非常に重要です。

 

Q6 ゼミをやっていましたか。どうやっていましたか。

A6 私は、4人のゼミを組んで司法試験の問題を解いていました(本当は5人なんですが、予備で1人抜けてしまったので…)。13時に集合して、2時間計って答案を作成し、Dropboxで共有。休憩をはさんだうえで、先週解いた問題の検討として、出題趣旨・採点実感の分析をし、各自の答案をみんなで添削していきました。

 私は、素朴な疑問を口にするタイプでした(突っかからなくいいところまで突っかかっていましたが…)。それに応えてくれる友人がおり、そこから議論が始まるというのがよくあるパターンでした。「そこは、こうじゃないか」「こう考えられないか」「そうだとするならば、こうなっちゃっておかしいのでは?」「いや、こうだから…」「なるほど、確かにな」的なやり取りをしたり、議論してもイマイチならば「探してみるわ」といって終わらせたりしていました。ちなみに、ゼミをやっていたメンバーは全員その年に合格しています。

 

Q7 出題の仕方が変わったけど、過去の問題も解くべきか。

A7 出題の仕方に慣れるために解くのであれば、不要です。司法試験という試験で求められる思考や知識を把握するために解くのであれば、解くべきです。その際には、いまの形になったら、どうなるのかなどを想像しながらやるといいと思います。この論点は、こういう形で出題されるかもなとか、今の形式ならここがこうなるだろうなとか、問題作成者になったつもりでやってみるといいと思います。

 

Q8 いつから解くべきか。

A8 それこそ目的によります。敵をとりあえず知っておきたいというのであれば、司法試験の勉強を始めて半年くらいたったら解いてみるのもありだと思います。ロースクール合格後の期間で一年分くらい解いてもいいと思います。ロースクールの既習1年目の夏休みから解き始めると、意外といい感じに終わるのではないかと思います。分析をするには、2年は必要だと思っています。

 知識がなくて解けないのか、知識はあるけど使いこなせないだけなのかなど、解けない理由を分析して、日頃の学習の中で補填していくといいと思います。

Fin

 

検討課題16:問題編~ゲームと憲法問題~

空の塔で合格思考憲法各論ゼミをやっています。

第3回で使用する問題は3問あるのですが、そのうち1問だけ特別に公開したいと思います。なお、ほぼ同じ内容の問題を中央大学の法職答練で出題されています。

 

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【問題】

 2019年,世界保健機構(WHO)が「ゲーム障害」を正式に疾病として認定した。「ゲーム障害」とは,「ゲームがそのほかの日常生活に優先し,問題が発生してもゲームを継続,あるいはさらに優先度を高め,それによって個人的,社会的に重大な障害をもたらすような反復的行動が少なくとも12か月にわたって継続する状態」をいい,ゲーム依存症とも呼ばれている。韓国では24歳男性が86時間連続でゲームをプレイし続け,下半身うっ血により死亡したという事例もあり,各国で実態の対応が行われ始めた。

 我が国においては,2016年になされた青少年のインターネット利用環境実態調査によると,青少年のインターネット利用者で,ゲームをする者は,全体の7割以上に及び,また,青少年の多くは,深夜までオンラインゲームを行うため,昼夜が逆転して,遅刻や欠席が続き,留年や退学を余儀なくされる学生も増えている。そのため,ゲーム障害に陥りやすいと考えられている。

 このような状況を鑑み,20**年,我が国でも,A省において,青少年の夜間のゲームを規制する「青少年夜間強制シャットダウン法」の立法を検討することになった。現在,A省では,20歳以下の青少年に対し,午後11時から午前8時までの間のゲームの利用を禁止する内容の立法措置(以下「強制シャットダウン制」という。)が検討されている。

 他方,我が国において,eスポーツの発達に伴い,未成年のプロゲーマーが出現している。eスポーツとは,「エレクトロニック・スポーツ」の略で,広義には,電子機器を用いて行う娯楽,競技,スポーツ全般を指す言葉であり,コンピューターゲームビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称である。プロゲーマーは大会の報酬などを基に生計を維持している。

 

【立法措置について】

 まず,立法措置としては,20歳以下の者(以下「青少年」という。)に対し,午後11時から午前8時までの間のゲームの利用が強制的にできないようにすることをゲーム会社に義務付けることを内容とする。この立法措置の目的は,青少年のゲーム障害の対策である。

 具体的な措置としては,ゲームのアカウントにマイナンバー(個人識別番号)を入力することで,それにより年齢を把握し,青少年のアカウントを特定する。そして,青少年のアカウントについては午後11時から午前8時までの間の使用ができず,結果的にゲームの利用が不可能になるというものである。なお,他の者のアカウントを使用した場合,使用させた者に対し罰則として罰金を課す。

 対象となるゲームは,日本のゲーム会社が発表したもの又は日本に海外のゲーム会社の支社があるものと対象とする。なお、オンラインゲームのみが対象ではなく、すべてのゲームが対象となる。オンラインゲームとは,インターネットなどの通信ネットワークを介して複数の人が同時に参加して行われるコンピューターゲームをいう。

 マイナンバーの利用については,盗用などのリスクがあるため,ゲーム会社に常に最新のプライバシー保護システムを採用することを義務付け,義務違反の場合には業務停止などの重大な罰則が定められている。

 

 A省における法案の検討の過程で,ゲーム会社から,子どものゲーム離れが進み,教育的に有効なゲームやコミュニケーションツールとしてのゲームなども利用できなくなり,教育的・文化的観点から不利益が大きいとの指摘がなされた。eスポーツ連合協議会から,青少年のプロゲーマーが国際大会等において強制終了せざるを得なくなり,また,日頃の特訓の時間が少なくなり大会での優勝が困難となることで,ゲーマーの収入としての優勝賞金の獲得が困難となってしまうとの指摘がなされた。

 

〔設 問〕

 あなたは,A省から依頼を受けて,法律家として,この立法措置が合憲か違憲かという点について,意見を述べることになった。A省からは,上記の立法措置の意見に加えて,仮に成年のゲーム障害の防止のために、成年も含めて同様の規制を行った場合についての意見も求められた。また,参考とすべき判例があれば,それを踏まえて論じるように,そして,判例の立場に問題があると考える場合には,そのことについても論じるように求められている。さらに,当然ながら,この立法措置のどの部分が,いかなる憲法上の権利との関係で問題になり得るのかを明確にする必要があるし,自己の見解と異なる立場に対して反論する必要があると考える場合は,それについても論じる必要がある。

 以上のことを前提として,あなた自身の意見を述べなさい。

 なお,未成年のプロゲーマーの大会出場において保護者の承諾があり適法な行為であることを前提とする。また,成年のプロゲーマーとの関係及びゲーム会社との関係における憲法上の問題については検討しなくてよい。