J-Law°

司法試験・予備試験受験生やロー受験生のモチベーション維持のために、定期的に問題の検討をしていきます。

検討課題17:検討編③~規制②の前半~

Ⅲ 規制②について

1 入口の特定

 規制②についての不満は、特定区域外の運転手が自家用車を利用して、一定の時間、特定地域を移動することができないというものです。

違憲の対象は法案第5-1です。具体的自由は“特定区域外の住民が自家用車で特定区域を制限なく通行する自由”と設定できます。そして、権利・条文の選択としては、あまり馴染みがない人もいるかもしれませんが、移動の自由(22条1項)です。移動の自由については、平成28年度司法試験の解説などで振れられていることがありますから、受験生としては押さえておくべきものです。

 

2 憲法上の権利の制約

 移動の自由については、本書には記載がありません(改訂にあたって書き足すべきでしたが、完全に失念していました。)。移動の自由については、検討課題12:検討編②(検討課題12:検討編②~原告の憲法上の主張~ - J-Law° (hatenablog.com))で記載していますが、ここで居住移転の自由・海外渡航の自由についての知識を整理しておきます(該当部分をコピペして、印刷して本書に挟んでおくといいと思います。)。

 

⑴ 知識の整理―居住・移転の自由、海外渡航の自由

⒜ 居住・移転の自由(22条1項)

 「居住」とは生活の本拠を定めることで、「移転」とは生活の本拠を移すことです。生活の本拠の決定は自己に委ねられるべきであることから、人格の発展に不可欠の権利とみなされます経済的自由の側面だけでなく、自己の好むところに移動するという人身の自由の側面他の人々との幅広い人的交流を通して人格形成に深く寄与し精神的な自由の側面ももっています。

移転の前提として、移動の自由が保障されていると考えられますが、上記の性質を持ち合わせていないと、その権利の重要性は低くなってしまうでしょう。居住・移動がいかにできないか、という点から制約の重大性を検討することになります 。

⒝ 外国移住及び国籍離脱の自由

 外国移住とは、外国に生活の本拠を移すことなので、単に移動し、そこで一時的に生活すること以上の現地での定着が想定されています。

 そうなると、一時的海外渡航の自由が認められるかが問題となります。判例 は、「外国へ一時旅行する自由をも含む」としています。永続的な移住が保障されるならば、一時的な旅行も当然保障されると考えるからです。もっとも、生活の本拠を自己決定に委ねることが、保障根拠ですから、そこから離れる以上、権利の重要性としては下がります。

 国籍離脱の自由には、個人の意思で国籍を離脱する自由、国籍を離脱しない自由としての国籍を恣意的に剥奪されない自由も含まれます。

 

⑵ 本問の検討

 “特定区域外の住民が自家用車で特定区域を制限なく通行する自由”は、「移動」にあたるでしょう。なお、経済的自由としての側面での通行を行う人もいれば、講演会などへの参加など精神的な自由としての側面で通行する人もいると考えられます。主体を限定していないため、様々な場面が想定できます。

 本件では、特定の時間帯に特定区域を通行することができなくなっているため、制限なく通行することができません。そのため、制約が認められます。

 

検討編④へ続く。