J-Law°

司法試験・予備試験受験生やロー受験生のモチベーション維持のために、定期的に問題の検討をしていきます。

検討課題1:検討編④~設問2~

Ⅴ 時間的条件を付与した許可だとどうなるのか?

 いままでの検討は、設問1についての検討です。ここからは設問2についてです。設問2は、時間的な条件を付けた形での許可処分です。この条件が付与されたことで、なにが変わるのかを考えながら検討していきます。

 

1 制約の段階

 そもそも、条件付きですが許可を得ています。つまり、集会をすることができるのです。となると、集会の自由への制約が認められるのかがまず考えなくてはなりません。

 許可を得ているとはいっても、聖火リレーが終了してからすでに1時間が経過していては意味がないでしょ、とXらは思うでしょう。つまり、Xらの保障してほしい集会の自由は、“聖火リレー中にB中央公園で集会をする自由”または“時間的な制限なくB中央公園で集会する自由”というものになります。では、このような具体的な自由が保障されるのでしょうか。

 いつでもどこでも集会をすることができる自由こそが憲法21条1項の想定するものです。もっとも、公園という場所の関係から制限を受ける可能性はあります。特に、A県公園管理条例によれば、条件をつけることができるのです。となると、条件を付けることは原則として想定されたものといえそうです。しかし、先ほど検討した公園の目的に反しない限りはいつでも行うことができるのですから、原則形態に反するものではありません。ここでもパブリックフォーラム論的な思考が出てくるのです。

 そうすると、時間的な条件を課すこと自体が制約となりそうです。この時間的な条件を課したことが、違憲の対象となります。

 

2 制約態様の段階

 制約態様が全面的な禁止ではなく、時間的な条件を課すことになりました。集会自体はできるのですから、一般的な事前規制とは異なります。確かに、集会前の規制措置ですが、集会自体を行うことができる以上、保障根拠への影響は乏しいと考えられます。

そして、時間に着目した規制ですから、内容中立規制にあたります。内容中立規制の場合、思想の自由市場を歪めるものではなく、自らの意見を発する機会は存在していることなどから保障根拠へのインパクトは乏しく、制約は重大なものではないというのが一般的な考えです。

 しかし、本件ではどうでしょうか。Xらの意見を聖火リレー中に発すことにより、対外的表明としての価値が存在すると考えると、時間をずらされてしまうことは、対外的表明の威力を弱めるものであり、保障根拠への影響があると考えられます。内容中立規制であっても、必ずしも緩やかな審査基準になるわけではないのです。このような事案に迫った考え方が重要になってきます。

 本問でのポイントは、その条件の妥当性(相当性)の検討だと思います。「公園の管理上必要があるとき」の限定解釈は泉佐野市民会館事件判決を利用するとしても、それに該当するとき、どんな条件でも許されるわけでありません。例えば、手段としての条件は必要最小限のものでなければならないなどの基準を定立する必要があります。

 

3 個別具体的検討の段階

 先ほどまでの検討によれば、警察の警備ではどうしようもない特別の事情があることから「公園の管理上必要があるとき」といえることになります。もっとも、条件を設定することで事態の防止が可能であれば、条件付きの許可をすべきということになります。この点、時間をずらすということで、警察の手が空き、警備に集中することができるので、紛争を防止することができます。

 問題は、2時間遅らせるという条件は相当なのかどうかです。聖火リレーが終了して1時間が経過しているとすると、確実に周辺に人はいなくなり、警察の警備体制が十分に整います。しかし、1時間も経過している必要はあるのでしょうか。もし、その必要はない(つまり、過剰な条件だ)と考えるのであれば、必要最小限のものとはいえません。他方で、1時間は必要な時間であり、1時間程度のずれであればXらの集会の意義は著しく失われるものではなく不利益性は低いと考えているのであれば、それは合憲となるでしょう。【後日思ったのですが、時間的条件ではなく、たとえば規模を縮小するような条件(数十人規模にすること)や場所の指定(聖火リレーからはちょっと離れた場所)にするなどの条件設定の方がいいのではないでしょうか。】

 主戦場は、2時間遅らせるという条件を設定することの違憲性であることを念頭に置き、検討しましょう。

Fin