J-Law°

司法試験・予備試験受験生やロー受験生のモチベーション維持のために、定期的に問題の検討をしていきます。

interval : ロー入試ステメンの書き方

ロー入試において、いわゆるステメンを書くのって、結構大変だったりしますよね。”ステメンの書き方”について、少し語っておこうと思います。

まず、こういうステメンを読んで、どう思いますか?

「私は、将来弁護士として働きたいと思い、○○研究室に所属しました。研究室では、多様なゼミがあったことから、積極的にゼミに参加し、仲間と切磋琢磨しながら、自分の法律に関する知識・能力を挙げることに努力しました。学部のゼミでは民法ゼミに所属し、様々なケースについて議論してきました。このような経験は私の知識・能力を高める有効な手段であると思っています。法科大学院では少人数のゼミの講義を受講し、さらに自らの知識・能力を高めるために努力したいと思っています。」

こんな感じのステメンってよくありますよね。
司法試験に向けて勉強してきた皆さんからすれば、ゼミや研究室での活動について書きたいことだと思います。
ですが、一歩引いて、採点をする教授の気持ちになって見てみてください。法科大学院ってなにをする場所でしょうか。司法試験に向けて勉強する場所です。その場所に来る人は、みんな基本的にゼミに積極的で、勉強しています。となると、上記の内容は受験生にとっては当然の前提になってしまい、特質すべき主張ではなくなってしまいます。

じゃあ、どうかけばいいの?
特殊な経験がないとだめなの?
などと疑問に思うでしょう。

そんなことはないと思います。要は、自分の経験を捉え直すことが重要です。

ステメンの書き方の重要な柱は、3つあります。

 

 ① 過去ー現在ー未来を意識する

 ② ”経験”よりも”具体的事実”を書く

 ③ アドミッションポリシーや設問の指示に従う

 

この3つを意識するだけで、内容が変わると思います。

 

Ⅰ 過去ー現在ー未来を意識する

 ステメンがうまく書けない人は、”過去”ばかりを見ています。しかし、重要なのは、過去ではなく、”未来”です。

 まず、ここでいう”現在”とは、ロースクールでの生活の時点を指します。そして、”過去”とは、大学の学部時代の経験を指します。他方で、”未来”とは、法律家として働いている時点を指します。

 法科大学院は、将来の有能な法曹を育てる機関です。となると、法科大学院にとって重要なのは、未来の姿です。未来において、この受験者はどのような活動をしているのだろうかというのを考えています。そして、その未来のために、法科大学院としては現在、どのようなことができるのだろうかを考えています。未来のために、法科大学院は各種のプログラムを用意しているのです。

 つまり、法科大学院は通過点にすぎず、ゴールは未来なのです。ステメンのときには、これを意識することです。法科大学院で○○の講義を受けたい理由は、未来において○○をしたいからです。やっちゃいがちな書き方としては、「過去に○○をしていたから、法科大学院で○○をしたい」という書き方で、未来がありません。そうなると、この受験者は将来どうなるのだろうかというビジョンがないのです。

 では、”過去”はどのように活かすのか。過去は未来というゴールに向けた出発点にすぎません。「過去に○○という経験をしたことから、○○に興味を持った」とか、「○○という経験を将来に生かしたい」とかいう形で構成するとよいのです。

 まずは、この時間軸上の3つの点、すなわち、過去ー現在ー未来を意識して構成してみましょう!

 

Ⅱ ”経験”よりも”具体的事実”を書く

 ”過去”については、”経験”を書くのですが、特別な経験をしている人なんてそんなにいません。上記の通り、きっかけとかでいいのです。

 より重要なのは、”未来”においてなにをするのか、です。これを考えるには、”将来、法律家としてどのようなことをしたいのか”を考える必要があります。けど、具体的にこれが決まっている人って、ロー受験生ではほとんどいないと思います(私もそうでした。)。

 発想を逆転させましょう。”未来”から考えてみます。つまり、”未来”において、どのような社会問題があり得るのか、それに対して、どのように法律家は活動するのかっていうことを考えるのです。

 難しいように聞こえるかもしれませんが、要は、”社会問題”をリサーチすることから始めましょう。Googleを開いて、検索エンジンに、「社会問題 法律家」とでも打ち込んだり、自分の”過去”とつながりやすい社会問題を調べてみてください。そして、その”具体的事実”を書くのです。

 例えば、「スポーツと法律」という講義を取っていた受験生がいたとします。この講義で、スポーツ業界における薬物使用(ドーピング)についての講義を受けました。「ドーピング 法律家」とググって、いろんな記事に目を通した上で、下記のようなステメンを書きました。なお、時間の関係で裏どりが正確にできていませんが、イメージとして参考にしてください。

「私は、スポーツと法律という講義を学部時代に受講しました。その中で、ドーピングについて興味を持ちました。検査によってドーピングが認められた場合、競技成績の執行、出場停止処分などスポーツ選手にとって重大な処分がなされます。また、2020年に予定されていた東京オリンピックを契機に、世界的潮流に合わせて日本でもドーピングを違法行為とする立法政策がなされようとしています。しかし、検査が適正になされない場合や意図的に行ったものではない場合にも重大な処分がなされてしまうことがあります。このような現状からすれば、インターネット上での売買がよりやりやすくなっていくと予測される将来において、スポーツ選手にとってドーピングは重大なリスクとなり、ストレスの重大な要因になると考えます。私は、このような問題に対し、法律家としてスポーツ選手とともに歩みたいと思います。選手の専属の弁護士となるという手段のほかに、ロビング活動を行うなどの方法で・・・」

 経験に当たる部分は冒頭の1文だけですが、すごくこいつできるやつに見えますよね。実際はググっただけですが。具体的なイベントや時期、社会の流れなどを正確に書くことで、現状の社会問題に対する分析力、そこから将来への想像力を持っているということがわかります。同内容の講義を受けているような学生はたくさんいます。しかし、その”経験”と”未来”との関係でとらえ直すことで、なんてことない経験がすごく立派に見えるのです。

 抽象的な内容よりも、具体的な事実を書くことが大切です!

 

Ⅲ アドミッションポリシーや設問の指示に従う

 ここまでの2つよりもさらに重要なことが、この3つ目です。

 各法科大学院では、アドミッションポリシーが設定されています。パンフレットに書かれているのですが、これをチェックしないで、ステメンが書けるはずがありません。

 各法科大学院は、将来こういう人材を育てられます!という意味を公表する形で、アドミッションポリシーなどを設定しています。とすれば、受験者の”将来”と法科大学院が育てられる”将来”が重なっていなければ、法科大学院としては、この受験者の将来はうちでは育てられないなぁと思ってしまうことになります。

 つまり、受験生が設定すべき”将来”のビジョンは、”アドミッションポリシー”などに沿ったものでなければなりません。私は、”アドミッションポリシー”などで使われている言葉を使ったりしていました。

 例えば、「国際性」をアドミッションポリシーとして掲げている場合、”将来”の設定において、国際問題や外国から国内に与える影響などをググる必要があります。そして、それを過去の経験とつなげるのです。なお、経験は経験すればいいので、ググれば、それも経験だと思いますよ。

 さて、もう一点。

 各法科大学院はステメンに書く内容について、指定しています。それに従って書くことです。

 例えば、慶應ローであれば、

あなたが,大学学部,大学院その他の教育研究機関において,どのような問題意識にもとづいて,学習,研究およびそれに関連する活動を行ってきたか,また,そのことがどのような将来のビジョンに結びつくのかを特筆すべき事項を 1 つから 3 つにまとめ,その主題を箇条書きしたうえで,内容について説明してください。

となっています。慶應ローではご丁寧に、ポイントⅠを書いてねとなっているのです。これに対応した書き方をせずに、”過去”だけを書いて満足するのは設問に従っていないことになります。この場合でも、”過去”よりも”未来”の分量を多く書くといいです。

 そして、慶應ローのアドミッションポリシーは3つです。「3つにまとめ」ってあるってことはアドミッションポリシーに対応する形で書けよというふうに思うのが普通です。

 

Ⅳ まとめ

 以上の3つのポイントを意識すれば十分すぎるステメンが書けます。

 ステメンの内容が思いつかないという人は、リサーチが不足しています。知識となる具体的な事実がなければ、書けません。答案と一緒です。なので、電車の帰り道、テレビを見ている時など、どーでもいいときで構いませんから、ググってみてください。嘘だと思っていると思いますが、ネットサーフィンが一番効果的な戦略です。

 あとは、それにつながる過去を用意するだけ。過去から考えるのではなく、未来から過去を捉え直す!です。意外と、なんでもない経験・学習が意外なものにつながっていたりします。

 こんな書き方をいう人はいないと思いますが、嘘だと思ってやってみてください。すごくいい内容になりますから。

※なお、この書き方はAO入試に合格できるステメンの書き方を参考にしています。就活でもかなり使えるものです。

 

ー次回以降ー

①司法試験・予備試験向け:平成26年度予備試験

②司法試験・予備試験向け:チケット転売に関するオリジナル問題

③ロー入試向け:早稲田大学2020年度