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司法試験・予備試験受験生やロー受験生のモチベーション維持のために、定期的に問題の検討をしていきます。

advice : 読み解く合格思考〔憲法〕改訂版の使い方を研究する~その2:人権総論編

新シリーズ「第2話」は、人権総論編です。

読み解く合格思考〔憲法〕改訂版(このシリーズでは「本書」といいます。)の第1部第1章から第3章(2~25頁)の部分について、少し研究していこうと思います。

解説や説明というよりは、この部分はこういうことを意識するとよいとか、この部分は後回しでいいとか、この部分は誤解しないでほしいとか、そういうことを話していこうと思います。

 

1 改訂にあたって…

 改訂した場所としては、①リーガルオピニオン型の問題への答え方、②人権総論として三段階審査を念頭に置いた基本的な憲法的思考、を書き加えました。①は、近年の司法試験の問題形式について、採点実感を踏まえて、書き方を提示してみました。②については、より各論的知識を活かせるように詳しめに記載してみました。

 

2 優先順位

 第1(2~8頁)はさらっと始めに読む場所です。

 第2憲法訴訟論概論は、やや難しい内容があると思います。そのため、始めから完璧に理解する必要はありません。ただ、訴訟において、どのように憲法上の主張が登場するのかは知っておくとより判例を分析的に読むことができるようになります。司法試験の形式は変わりましたが、憲法の学習の手助けにはなる部分です。

 第3人権総論は、まさに「合格思考」となる部分です。まずは、ここを読み、なんとなく理解したら、問題で実践演習をしましょう。ただし、この中でも、「5 違憲の対象の選択」(24~25頁)は最終的に理解すればいい部分です。あえてこの内容を書いたのは、憲法の学習にあたっていると、論者によって言葉の使い方が若干異なってきます。後輩と話していて、よくあるのが、処分違憲適用違憲の意味がごちゃごちゃになっているような気がしました。その区別のために、あえて書きました。憲法においては、論者によって意味が異なることが多く、理解できない原因の一つだと思っています。この論者は、どの意味で使っているのかを意識しましょう(そのためのツールとして使ってもらえるかなと思います。)。

 

3 人権総論をもっと深く見ていく

 せっかくですから、人権総論として書かれている憲法的思考をもう少し深くみていくことにします。

 まずは、「入口の特定」という部分です。改訂版になって新しく書いた概念で、たぶんどこにもこんな言葉は載っていないと思います。答案にこの3つを書くというよりは、考える入口をミスらないための概念です。入口さえ特定されていれば、答案上で考えがぶれることが少なくなると思います。

 「憲法上の権利の制約」については、それほど新しい情報はないと思います。条文の文言からという点は意識しきれていないことが多いと思いますが、憲法も文言を解釈し適用するというのは変わりありません。文言の意味を暗記しておかなければいけませんね。

 「判断枠組み」については、本質的な部分(比較衡量についての考え)を理解しておくべきです。処分違憲であっても、比較考量が基本なのです。権利の重要性や制約の重大性については、次項で図を含めて説明したいと思います。判断枠組みの種類については、よく言われている3つをまとめてみました。LRAの基準の位置づけについては、異なる考え方もあります。その点は、自分の考えと異なる部分は修正してください。

 「個別的具体的検討」の部分については、かなり踏み込んだ記載をしています。目的が重要といえるためには、なにが必要かという評価に相当するような部分を詳しく記載してみました。本来であれば、判例を分析して、どのような点に着目しているのかを確認すべきです。ただ、憲法が苦手な人や初学者は、とりあえず、こんな感じで理解しておけばとりあえずは大丈夫です(ローの教授が言っていたので、完全な誤りであるとは考えていません。)。

 ざっと意識すべき部分や注意点はこのような感じだと思います。

 

4 22頁のあの図を深くみていく

 22頁の【イメージ図】はあくまでもイメージです。この図を見ながら、18~22頁の考え方を復習できます。少しみなさんの心を幼くするとちょうどいいです。

 真ん中の核となる部分に保障根拠があります。そして、それの周りには“バリア”があるのです。この“バリア”の中に入っていない棒人間を保護する必要はありません。まずは、“バリア”の中に入っているか否かを確かめます。もちろん前提として、国家から攻撃されていることを確かめましょう。この攻撃が制約です。

 “バリア”の中にいる人はすべて平等でしょうか。例えば、“バリア”の縁にいるような人と“バリア”の中心に近い人とでは救いのレベルが違います。“バリア”の縁にいる、つまり、攻撃に自ら近づいている人ってそんなに保護する必要ありませんよね。このイメージが権利の重要性になります。“バリア”の中のどこにいるのか(保障根拠との距離間)を考えていくのです。

 “バリア”の縁ばかりを攻撃されていても、それほど大きなダメージはありません。“バリア”の真ん中を攻撃されたらどうでしょう。本来届くはずのない核となる部分にミサイルがぶち込まれたら、たまったもんじゃありません。これが制約の重大性、つまり、保障根拠へのインパクトです。

 権利の重要性や制約の重大性は、この感覚的なイメージが意外に役に立ちます。“バリア”のどこにいるのか、どこへミサイルがぶっ放されているのか、意識するといいでしょう。そして、この検討をするためには、保障根拠を暗記しておかなければなりません。総論を意識すると、各論でどこを絶対的に暗記しておくべきかが見えてきます。

 ちなみに、これをゼミで一つ一つ図を書き加えながら説明するといいと思います。

 

というわけで、今回は総論編を見ていきました。

次回は、人権各論(26~142頁)を見ていきたいと思います。 

各論編⇒https://j-law.hatenablog.com/entry/2020/08/06/232737