advice : 読み解く合格思考〔憲法〕改訂版の使い方を研究する~その3:各論編
遅くなってごめんなさい。
今回は、本書の一番使いこなすべき「人権各論」(26~142頁)を見ていきたいと思います。
各論の知識を使うことは、今でこそ当たり前のようになりました。ここでの知識をいかに使いこなすかが重要になってきます。改訂した部分を含めて、どのように本書を利用すると効果的なのかを研究していきましょう。
1 改訂にあたって…
よく見ると、改訂した箇所が結構あるかと思います。特に、財産権、生存権、選挙権、教育を受ける自由については大幅な改訂を行いました。判例を意識した書き方というのもがわかりやすくなっていると思います。そのほかは、順番を入れ替えたり、少し書き加えたりしています。書き加えた部分については、私が受験時代にこの部分の記載ほしかったなぁという点(アファーマティブアクションなど)などです。とはいえ、全体としてのボリューム感はそれほど変わらないと思っています。
2 暗記すべき場所・理解すべき場所
各論の知識の隅々まで暗記しなければならない…というわけではないと思っています。本当に重要な部分は、総論的な思考です(前回の部分です。)。総論的な思考を展開させるためには、どの部分を覚えるべきかを考えてみましょう。まずは、条文・定義、保障類型を知らなければ、保障範囲を描くことはできません。次に保障根拠がわからなければ、権利の重要性や制約の重大性を考えることはできません。最後に判例の規範を覚えていなければ、答案に展開できません。逆に言えば、これらを知っていれば、すべて考えられるはずなのです。
ただ、現場ですべてを考えることはできませんし、判例の傾向を知っておかなければなりません。本書の各論は、判例を分析してみると、こうなると書かれていますが、保障根拠との兼ね合いで説明がつけられたりします。つまり、暗記するというよりも理解する部分です。
理解する部分を、他人に説明できるくらいまで理解できれば、たぶん覚えてしまっている人がほとんどだと思います。ここまで、理解しまくりましょう!
3 論証例の使い方
論証例を使うことについて、賛否があります。正直なところ、判例の規範は暗記しておかなければ点数になりません。そうだとすると、論証例は覚える必要があると思います。ただ、何も考えずに暗記するだけでは意味がありません。受験生の中には、論証例を完璧にいえるけどその意味がよくわかっていない人が多いです(なぜ、ここでこのような論理を展開しているのかがよくわからない人とかです。)。
論証例の良い使い方は、まず、その論理をちゃんと理解することです。どうしてこういう表現を使っているのか、論理はどうなっているのか、どうつながっているのかを考えることです。考えると、たぶん自分にとってはちょっと足りない感じがするかもしれません。そのときは、付け足しましょう。その上で、覚えます。
とにかく、まずは理解しましょう。理解できないとすると、それは不十分な論証例だということになります。先輩が作っていても、センスのない論証例なんてたくさんあります。本書の論証例は一応チェックしましたが、個人的には、論証例は例にすぎないと思ってチェックをしています。つまり、誤っていないけど、ちょっと足りないなぁと思っても、例としては成り立っていると判断した箇所もあります。決して誤っていないということはわかってください。
4 注意点:平等権における例示列挙説について
これは大変申し訳ないのですが、私が最後に修正しそこなってしまった部分の話です。平等権の例示列挙説は、憲法14条1項の適用の範囲についての考え方です。しかし、私は、文言にあたると一発で違憲となるわけではないという考えだと誤解していました。例示列挙説の説明部分については修正をしたのですが、それ以外の部分でやや誤った言い方をしてしまっている部分があります。その点については、各自で改訂の方をお願いしたいと思います。
例示列挙説は、憲法14条1項の適用範囲についての考え方です。文言に該当しない区別についても、憲法14条1項の適用があるかどうかという問題の所在が出発点です。そのため、文言に該当する区別の場合、例示列挙説に触れる必要はありません。問題の所在が生じて、初めて検討することになるのです。(2刷りのときに直せたらと思いますので、みなさん買ってください笑)
今回は各論部分を見てきました。なんとなくわかってもらえたでしょうか。
次回は、問題部分(第2部~第4部)の使い方を研究したいと思います。
問題演習編⇒https://j-law.hatenablog.com/entry/2020/08/10/153943