J-Law°

司法試験・予備試験受験生やロー受験生のモチベーション維持のために、定期的に問題の検討をしていきます。

検討課題4:問題編~判例の射程(民法編)~

どーも。

Intervalにしようかと思ったのですが、

司法試験の日程が決まったのもあり、司法試験に向けた問題にしようと思います。

民法の予想問題です(まじで出てもおかしくないやつ)!

 

単なる予想問題だけではありません。

今回の中心となるテーマは、判例の射程”です。

司法試験では意識せざるを得ないものです。

司法試験に向けて勉強している方々はきっと、「判例の射程を意識して論じた方がいいよ」とか「判例を読むときはその射程を考えるべきだ」とか言われたことがあるでしょう。ただ、判例の射程ってなんなんでしょうか。「事案が違うのに判例の射程が及ぶってどういうこと」って思ったりしませんか?

よくわからない原因は、「判例」と「判例の射程」というかっこよさげな言葉の意味をそれっぽく理解している点だと思っています。「判例」って、最高裁判所の判断であるというのは、不正確ですよ(民訴法318条1項を見てみてください。)。

法律の勉強がうまくいかない、自信がない、伸びてこないと悩んでいる人ほど、こういう抽象的な言葉について、具体的な説明ができないと思います。

私自身がそうでしたし、こういうのをそれっぽく理解しているだけで、実際にちゃんとわかったのはロースクール時代でした。一度、理解して、自分なりにやっていくことで、勉強の質は格段に変わったと思います。

今回は知識の整理として、①まず判例”とはなにか、ということを話した上で、②判例の射程”とはなにか、ということを説明したいと思います。そして、③実際にどうやって問題で活かすのかという点を実践したいと思います。

下記の〔事実関係〕を前提に、〔設問〕に答えてください。

その際に、平成8年判決の判例の射程について、自分なりに説明できるように読みこんでください。

 

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〔事実関係〕

1 Xは、Y社から、平成29年5月15日、K県H市に存する本件マンションを代金5000万円で買い受けた。その際、Xは、Y社の完全子会社であるA社との間で「ライフケア契約」と称する契約を、同様にY社の完全子会社であるB社との間で「ケアホテル契約」と称する契約をそれぞれ締結した。本件売買契約、本件ライフケア契約、本件ケアホテル契約については、別個の契約書が作成されている。

2 本件売買契約書には、冒頭に、「このマンションは、ライフケアを目的として分譲されるものです。ライフケア契約は、入居時60歳以上で自立して生活することの可能な方の精神的、身体的健康維持に関するケアサービスを、土地・建物の管理とともに、別に定める管理規約および本契約に従い提供するものです。」との記載があり、その条項中に「Xは、本件マンションの引渡日までに、A社との間でライフケア契約を締結するものとし、同契約書に定めるケアサービス料等を負担しなければなりません。」、「Xは、本件マンションの所有権取得後、第三者にその所有権を移転するときは、あらかじめ譲受人についてケアメンバー資格を得てから譲渡契約をしなければならないものとします。」等の記載がある。他方、本件売買契約書中に、本件ケアホテル契約に関する条項はない。

3 本件ライフケア契約書には、A社がケアメンバーになった者に対して提供するサービスの内容として、「本件マンションの食堂、ホール、温泉大浴場等各種施設の維持運営、食堂における食事の提供、介護サービス、助言・相談サービスその他」が定められ、他方、ケアメンバー1名に当たり50万円の運営保証金・月額10万円のケアサービス料(食費を含む。)の支払義務があること、本件マンションを第三者に売却した場合であっても、当該第三者がライフケア契約を締結するまではケアサービス料を支払わなければならないこと等が定められている。

4 本件ケアホテル契約の主要な内容は、ホテルメンバー1名あたり登録料・預かり保証金計200円を支払って会員になると、B社の経営するケアホテル内の温泉施設やベッド付きの部屋などを自由に利用することができる。マンション購入の勧誘を受けた際、将来介護を要することになった場合に備えて、ケアホテルのメンバーになっておくとよいと言われたが、本件マンションを購入するにはケアホテルのメンバーになる必要があるとの説明を受けたことはない。本件マンションの周辺にはY社が分譲した本件マンションと同種のケアサービス付マンション数棟が群れを成しているが、本件マンションと本件ケアホテルとは自動車で10分ほどの離れた位置にある。

5 Xは、本件マンションを購入した数年後に病院に入院して胃潰瘍の手術を受け、令和2年5月15日、本件マンションに戻った。Xは、身体の衰弱が著しかったため、同日、A社に対し、特別食(おかゆ等)の自室への配膳サービスを求めたところ、人手が足りないからと言われて断られ、16日、A社に対し、「専門の担当者による日常の一時的な生活介護」として、ケアヘルパーによる自室から近くの商店街までの買い物の付き添いサービスを求めたところ、同様に人手が足りないからと言われて断られた。

 また、Xは、同月18日、B社に対し、養生のため3週間のケアホテルへの入所を求めたところ、その必要があるとは見受けられないとの理由で断られた。

 そこで、Xは、A社及びB社に対し、同月19日、上記と同様のサービス及び入所を求めた上で、3日以内に本件ライフケア契約又は本件ケアホテル契約に基づく債務の履行をしないときは、各契約を解除する旨通告したが、全く対応がなされず、各契約は解除された。

6 Xは、Y社に対し、令和2年7月10日、本件売買契約を解除するので、代金5000万円を返還せよと要求する内容証明郵便を送付した。これに対し、Y社は、Y社には本件売買契約上の債務の不履行がないから、本件売買契約を解除することはできない、との主張を記載した内容証明郵便を返送してきた。

 

〔設 問〕

 最3小判平成8・11・12民集50巻10号2673頁[Ⅱ-44](以下「本件判例」という。)を参照し、依頼を受けた弁護士として、次の設問に答えなさい。

1 上記のXから依頼を受けた事案が本件判例の射程内にあるか。本事案における問題の所在を示した上で、論じなさい。

2 Xは、本件ライフケア契約におけるA社の債務不履行を理由にして、本件売買契約を解除することができるか。

3 Xは、本件ケアホテル契約におけるB社の債務不履行を理由にして、本件売買契約を解除することができるか。

 

↓本件判例についての最高裁判所のURL↓

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52582

 

 ※検討編①⇒https://j-law.hatenablog.com/entry/2020/05/18/171933