J-Law°

司法試験・予備試験受験生やロー受験生のモチベーション維持のために、定期的に問題の検討をしていきます。

検討課題5:問題編~「憲法判例」の射程~

憲法判例の射程」について検討していきたいと思います。

司法試験本番に近いスタイルにしてみました。

※スタイルを近づけただけで、ロー受験生も解くべきと思っています。

法学セミナーでも同様の問題はあります(今回の検討資料の参考にしています。)し、

いろいろと知っているかもしれません。

ただ、この問題って憲法判例の射程を考えるのにはすごく役に立つんです。

今回は、「憲法判例の射程」を意識して解いてもらえればと思います。

 

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〔憲 法〕

 遺族補償年金とは,死亡した職員の遺族のうち,一般に独力で生計を維持することができる者,あるいは,死亡職員との間によるものとは別の生計維持関係を形成した者は,その生計維持関係をもって生活することを原則としながら,そうでない者については,喪失した被扶養利益を補填する必要性を認めて,その所得保障として一定額の年金を支給するものとしたものである。地方公務員が公務上死亡した場合の遺族補償年金に関しては,地方公務員災害補填法(以下「本法」という。)にその定めがある。

 1967年に制定された本法は,当時の社会情勢や財政事情等を考慮して,職員の死亡により扶養者を喪失した遺族のうち,一般に就労が困難であり,自活可能でないと判断される者に遺族補償年金を支給するとの目的の下,死亡職員の妻については,一般的に就労が困難であることが多いことなどを考慮して,当該年金の支給に年齢要件を設けず,妻以外の者については,他の公的年金との均衡を考慮し,年齢要件を設けた(本法32条)。

 地方公務員であるA女は,公務により精神障害を発症し自殺した。そのため,亡A女の夫であるX(51歳)は,地方公務員災害補償基金B県支部長Yに対し,本法に基づき,遺族補償年金の支給請求をしたが,Yは不支給とする処分を行った。Xは,本法32条1項ただし書と同項1号(以下「本件各規定」という。)が,妻と夫との間で遺族補償年金の受給資格を別異に取り扱うことは差別であると考え,Yに対し,当該処分の取消訴訟を提起した。

 

〔設 問〕

 あなたがこの訴訟の担当裁判官であるとした場合,本件各規定の憲法上の問題点について,どのように考えるか。最大判昭和57・7・7民集36巻7号1235頁(堀木訴訟判決)及び最大判平成20・6・4民集72巻6号1367頁(国籍法違憲判決),参考資料1ないし3を参考にしながら,X及びYの想定される主張を踏まえて,あなたの意見を論じなさい。

 

〔参考資料1〕:遺族補償年金に関する立法経緯

 1947年,労働基準法が制定され,労働者の業務上の負傷,疾病,障害または死亡に対し,使用者が無過失責任を負うことが明確になった。これと同時に,業務上の災害発生に際し,使用者の一時的補償負担の緩和を図り,労働者に対する災害補償を迅速かつ確実に行うため,国が使用者から保険料を徴収し,災害補償保険を経営する労災保険法も施行された。その後,1951年,国家公務員の災害補償に関する国公災法が制定された。この当時の遺族補償は,受給資格につき夫と妻との間で別異取扱いのない一時金であったが,1955年の労災保険法改正,1966年の国公災法改正により年金化され,1967年に,本法が制定された。

 

〔参考資料2〕:地方公務員災害補償法

(この法律の目的)

第1条 この法律は,地方公務員等の公務上の災害(負傷,疾病,障害又は死亡をいう。以下同じ。)又は通勤による災害に対する補償(以下「補償」という。)の迅速かつ公正な実施を確保するため,地方公共団体等に代わつて補償を行う基金の制度を設け,その行う事業に関して必要な事項を定めるとともに,その他地方公務員等の補償に関して必要な事項を定め,もつて地方公務員等及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。

(遺族補償)

第31条 職員が公務上死亡し,又は通勤により死亡した場合においては,遺族補償として,職員の遺族に対して,遺族補償年金又は遺族補償一時金を支給する。

(遺族補償年金)

第32条 遺族補償年金を受けることができる遺族は,職員の配偶者(婚姻の届出をしていないが,職員の死亡の当時事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。以下同じ。),子,父母,孫,祖父母及び兄弟姉妹であつて,職員の死亡の当時その収入によつて生計を維持していたものとする。ただし,妻(婚姻の届出をしていないが,事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。次条において同じ。)以外の者にあつては,職員の死亡の当時次に掲げる要件に該当した場合に限るものとする。

一 夫(婚姻の届出をしていないが,事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。以下同じ。),父母又は祖父母については,六十歳以上であること。

二~四 (略)

2 (略)

3 遺族補償年金を受けるべき遺族の順位は,配偶者,子,父母,孫,祖父母及び兄弟姉妹の順序とし,父母については,養父母を先にし,実父母を後にする。

(遺族補償一時金)

第36条 遺族補償一時金は,次に掲げる場合に支給する。

一 職員の死亡の当時遺族補償年金を受けることができる遺族がないとき。

二 (略)

2 (略)

第37条 遺族補償一時金を受けることができる遺族は,職員の死亡の当時において次の各号の一に該当する者とする。

一 配偶者

二~四 (略)

2 遺族補償一時金を受けるべき遺族の順位は,前項各号の順序とし,同項第二号及び第四号に掲げる者のうちにあつては,当該各号に掲げる順序とし,父母については,養父母を先にし,実父母を後にする。

3 (略)

(福祉事業)

第47条 基金は,被災職員及びその遺族の福祉に関して必要な次の事業を行うように努めなければならない。

一 (略)

二 被災職員の療養生活の援護,被災職員が受ける介護の援護,その遺族の就学の援護その他の被災職員及びその遺族の援護を図るために必要な資金の支給その他の事業

2 (略)

(損害賠償との調整等)

第58条 地方公共団体(職員が地方独立行政法人に在職中に公務上の災害又は通勤による災害を受けた場合にあつては,当該地方独立行政法人。以下この項において同じ。)が国家賠償法(昭和二十二年法律第百二十五号),民法(明治二十九年法律第八十九号)その他の法律による損害賠償の責めに任ずる場合において,基金がこの法律による補償を行つたときは,同一の事由については,地方公共団体は,その価額の限度においてその損害賠償の責めを免れる。

2 前項の場合において,補償を受けるべき者が,同一の事由につき国家賠償法民法その他の法律による損害賠償を受けたときは,基金は,その価額の限度において補償の義務を免れる。

第59条 基金は,補償の原因である災害が第三者の行為によつて生じた場合に補償を行なつたときは,その価額の限度において,補償を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。

2 前項の場合において,補償を受けるべき者が当該第三者から同一の事由につき損害賠償を受けたときは,基金は,その価額の限度において補償の義務を免れる。

 

〔参考資料3〕:立法当時と近年の社会情勢等

地公災法が立法された昭和40 年代には,企業は,終身雇用,年功序列賃金,企業別組合といった日本型雇用慣行により,主として男性労働者を正社員として処遇していたため,その妻の多くが,就業について相当な困難を抱えていた。また,性別役割分担意識も相まって,妻は専業主婦として日常家事を分担しており(昭和55 年の時点で,専業主婦世帯は1114 万世帯,共働き世帯は614 万世帯であった),その結果,夫と死別したり,離婚することにより被扶養利益を喪失した母子世帯の所得保障を行う必要性は高かった。

 近年は,性別役割分担意識が希薄化し,女性の社会進出が進んだ結果,1990 年代には,雇用者の共働き世帯が専業主婦世帯を上回った(平成22 年には,専業主婦世帯が797 万世帯であったのに対し,共働き世帯は1012 万世帯に達した)。他方で,男性の非正規雇用は増加しており,社会保障制度においても,男性が正規職員として安定的に就業しているという前提は見直さざるを得なくなっている。

 もちろん,今日においても,女性の方が,男性に比べて,依然として賃金が低く,非正規雇用の割合が多いなど,就労形態や獲得賃金等について不利な状況にある(例えば,母子家庭を父子家庭と比較すると,平均年間収入が約半分と劣るため,相対的貧困率が約2 倍になっている)。しかし,平成10 年以降は,男性が女性より完全失業率が高く,平成22 年には過去最大となっていること,母子家庭においても,父子家庭と比較すると収入が劣るものの,84.5%が就業できていることなどから,近年は,男女間の就業形態や収入の差は,あくまでも相対的なものであるとの指摘もある。

 

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判例判例の射程についての基本的なことは、

https://j-law.hatenablog.com/entry/2020/05/18/171933

を復習してください!

では、また明日・・・

検討編①→https://j-law.hatenablog.com/entry/2020/05/22/170053